とにもかくにも、チケットの姿が見えないまま、いろんなものの段取りをしていくほど、心細いものはなかった。友人のAは、千葉県在住のSちゃんに、何度か電話して、「先にチケット送ってもらってもいいよ」と、やんわり言ったようだが、千葉県在住のSちゃんは、「前日から京都に泊まるし」・・・という事で、「まかせておきなさい」と言わんがばかりだった。

Sちゃんは、もともとAの高校時代の友人で、実家は京都なのだ、結婚して、千葉在住となっている・・・そして、今回SMAPコンサートに参加する4人は、わたしと、Aと、Sちゃんと、Sちゃんの妹さんの4人だった、もちろんSちゃんの妹さんは、京都在住だ・・・そんな背景をAから説明されたわたしは・・・それなら大丈夫やん。と思った。まるでSちゃんの妹を人質にとっているような気分でもあった。

ところが・・・Sちゃんは、子供さんのキャンプの送り出しとかなにかとかで・・・前日の京都入りができなくなった・・・その上、なぜか台風が来ている。なんだか、いや〜な予感がわたしの頭に出そうになるのをもぐらたたきの要領で、ぽんぽんと、たたきつぶしていく、自分の頭の中が見えた。
「ほんまに大丈夫なんやろか?」
これが、わたしの直接の友人なら、
「あんたぁ〜ほんまに来てやぁ〜け〜へんかったら、どないなるかわかってるやろなぁ〜」とすごみもできるのだが・・・友人Aの友人ときているから、わたしに口を挟む権利も余地もない。わたしは・・・遠回しに聞いてみる。

「なぁ、Aって、Sちゃんとはめちゃ仲いいねんやんなぁ?」
仲がめちゃめちゃいいなら、大親友なら安心だから・・・というわたしの気持ちがそんな質問になるのだった・・・するとAは
「めちゃめちゃっていう事はないですよ・・・・あっち(千葉)に行ってからは、年に1回、会うかあわへんかやし・・・そういえば、妹ちゃんの名前・・・なんて言うたかなぁ〜」と、きたもんだ。オイオイ・・・それって、それって、それって・・・・大丈夫なんだろか?
ま、わたしは、この時点でAを信じるしかないのだ。Aは約束事はかならず守るし、ドタキャンはないし、本当に信じられるやつなのだ、だからその友人だから・・・という気持ちを持つしかなかった。

前日(9日)に、行くというキャンプ仲間の奥さんがその前日の8日にグッズだけを買いに走った。という情報がその、だんなからはいって来る。ようするに、コンサートグッズはコンサートチケットを持っていなくとも、ホールの外で販売があり、購入ができるのだ・・・・。現場にはいかなきゃならないが、誰でも購入できるということなのだ・・・ちょっと「なんだ」と思った。

コンサート開演は6:00からなのに、グッズは朝11:00〜の販売。その上、長蛇の列との・・・情報がはいってくる。わたしは、車で行く事にした。朝、一番ならドーム近所のタイムスにほりこんで、グッズを買って、また、車に積み込みに行って、身軽にコンサートを見る事ができるではないか・・・・。と考えた。8:30には、京都を出よう、友人Aを乗せて、と決めた。

しかし眠れない前夜・・・なんなら、いまから走り出してもいいかも・・・とも、思った。もう99%見れる!と、確信していた。

いよいよ、コンサート当日、グッズ購入予定金額3万円。チケット代6500円。駐車場代・高速代・食事代もろもろで、本日1日の予算は、5万円也。なのに・・・わたしは、財布に15万円を詰め込んだ。「なんか、あるかもしれへんし・・・」これがわたしのいつもの考え方だ。カードでは話にならん時ってよく、あるのだ・・・現金がものを言うのだ・・・。

Aを迎えに行き、いよいよ・・・SMAPの待つ(いや、わたしを待っているのではないかもしれないが、もうこの時は、拓也様にお逢いする為に、拓也様がわたしを待っていてくれる、という考えになってきているのだ)、大阪ドームへ、座席もわからず、チケットも持っていないのに、いざ、出発だ。
Aは「Sちゃん、新幹線乗ったかなぁ〜・・・何時頃つくんやろ・・・」と心配げに、助手席でひとりごと・・・(んなもん、わたしに聞かれても、わかるかいなっ)
「ちょっと、電話してみますわ」(そうせー、そうせー)
千葉を出ているであろうSちゃんに電話をかけるA・・・・
国道の電光掲示板が点滅している・・・京都南インター〜吹田を越えて、25キロ渋滞・・・「げっ」なんでや・・「あかん、下道でいくわ」「なんか、いや〜な予感・・・今日は、ついてないのかも・・・」日曜日やし、朝のカウントダウンハイパーもなかったし・・・乙女座はどうなんだろう?なんて事を考えながら、名神には上がらず、1号線を行く・・・

となりで、Sちゃんに電話がつながったようだ・・・
うきうき声でAは、ハイテンションでSちゃんに語りかけている

「おっはぁ〜よぉぉぉぉ〜(かなりテンションは高い、どうせなら「おっはぁ〜」と信吾ママにしてくれたらいいのに、とハンドルを持つわたしのテンションも高かった)Sちゃん、いまどこ?」
この
「いまどこ!」という問いかけには、すでに家を出ていることが限定となっている聞き方である「あなたが、自宅を出発しているのは、百も承知です。その上で、お聞きしますが、いまどのへんまで、こちら方面に向かってらっしゃいますか?」の、集大成が「イマドコ?」である。
電話のSちゃんの声は聞こえないわたしにとって・・・次ぎに、聞こえるAの返事は、予測すると
「あ、もうそんなとこなん、なら、昼すぎにはつくね」とか
「ふんふん、今から新幹線なん、うんわかった気をつけてね」とかである・・・・
ところが・・・・

ハンドルを切り損ねるかと・・・
前の車にオカマを掘るかと・・・
ひょっとして、人類滅亡ではないかと・・・
目の前が・・・目の前が・・・真っ暗になるとはこういう事なんだろう・・・
はっきり聞こえたAのセリフ
「ええぇっ!来られへんのぉぉぉ〜!」
年末ジャンボが当たったと思って、換金に行ったら、組違いだったという時よりも、悲しかった。
USJで、最終回の催し物に、並んでいて・・・「はい、ここまでしかはいれません、申し訳ありません」と、自分の前で列を切られた時よりも、はるかに悲しかった。
学生時代に「あんた、何はいてきてんの?」と友人に言われ、見ると学生服のスカートの下からパジャマが出ていて、あっ、パジャマのズボンを脱ぎ忘れて登校したんや、ぎゃぁ〜となった時よりも、悲しかった。
しかし、ここで、わたしが落ち込みを見せたら、Aに悪い・・・と思った。電話を切った放心状態のAに向かって、なんの動揺もしてないよ・・・というしゃべり方でわたしは
「どうしたん?なんかあったん?」と訪ねた。
前を見たまま、力なくAは答えた「今、家を出ようとしたら、知り合いの人がお亡くなりになったという電話が入って、・・・・」あとは、蚊のなくような声で聞こえない。わたしの車は高級乗用車ではないのだ・・・ただでさえ、トラックと人に言われているので、車内はうるさい、「電話が入って・・・・」で、どやねんなっ!わからへんやん!なんて?なんて?
絶対絶命・大ピンチだ。
「ええっ!来られへんの!」と叫んでしまったAは、かなり後悔をしているようだった・・・たしかに、事情が、事情なだけに・・・しかし・・・・Aは続けた・・・
「とりあえず、ドームにむかって、またあとで連絡するから・・・」ってSちゃん、言わはった・・・。と。

Aの声は、とてもちいさく・・・Aの目は、ぼーっと前を見ていた。
その間も、車は大阪ドーム目指して走っていた。
SMAPを見れる確立が・・・99%近くまで、のぼりつめていた、グラフの針が「ぶしゅぅ」といや〜な音とともに、折れた気がした・・・確立8%にダウンだ。

「信じよう・信じよう・信じよう・きはるよね、ねっねっねっ、Sちゃん、きはりますよね(誰に聞いているのだろう?)」Aは、助手席でぶつぶつつぶやいている・・・・空は台風一過で、ドピーカン青空なのに
車内の音楽は、♪あおいいなずまがぁ〜僕をせめぇ〜る♪こころぉ〜からだぁぁぁぁ〜♪やきつくすぅぅぅぅ〜♪げっちゅー・・・・
2人は、いなずまに打たれたようだった。
・た・たくやさまぁぁぁぁぁあああああ〜  つづく


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